
はじめに
針金掛けは盆栽専門雑誌でも度々特集が組まれるほど基本的な技術ですが、成形には不可欠な技術でもあります。
しかし、プロの盆栽屋さんでも針金をちゃんと巻ける人とそうでない人がいるほど奥の深い技術でもあります。
最初はプロや熟達者に巻いてもらい、それをお手本にするもの良いかもしれません。
針金を巻くことで自分で形づくり(整姿)が出来る様になるので、盆栽の楽しみの幅が確実に広がります。
すぐに巻けるようになろうと思わず、じっくり習得したい技術です。
なぜ針金をかけるのか?
簡単に言ってしまうと盆栽の枝などを曲げて樹形を変えたり、整える為です。
これを整姿(せいし)とよびます。
針金を使わず、剪定のみで整姿する方法もありますが、熟練の技と時間が必要になるため、針金で整姿するのが一般的です。
整姿するのは単に見栄えだけでなく、日の当たらない枝ができないようにするという目的もあります。
もし、他の枝で影になっている枝があればその枝は弱ってしまいますので、間引く必要があります。
針金の種類
大きく分けて2つあります
アルミ線
アルミの線です。比較的柔らかく簡単に曲げることが出来ます。
一度曲げてもヤットコで伸ばすことで再利用できる利点もあります。
主に枝の柔らかい盆栽や雑木に使われます。
太さの単位はmm(ミリ)で呼ばれます。
銅線
銅製の線です。アルミ線よりも固く、一度曲げると更に硬くなり、再利用は難しいです。
松柏や硬い枝の盆栽に使用され、盆栽屋でも松柏は銅線を使うところが多いです。
太さは10番線など「番」で呼ばれます。そしてどの太さを使うかを選ぶことを「番手(ばんて)選び」と言います。
アルミ線に比べ強度が強いため、かなり枝を曲げることが出来ます。
2種類の線を混ぜて使うことはほぼありません。1種類の線でかけていきます。
松柏は銅線、雑木はアルミ線と分けてしまっても良いかもしれません。
ただ強度が強い分、銅線の方が難易度が高めです。
実際、6番線以上になるとプロの盆栽屋さんでも綺麗に巻ける人は少ないです。
(6番以上はあまり使いませんが・・)
では実際にどの枝にどの太さの針金を巻けば良いのでしょうか?
針金掛けはとにかく数
盆栽界でよく使われる言葉です。盆栽は生き物なので一つ一つ(一本一本)枝の太さや強度が違います。
そのため、同じ太さだからといって、同じ番手を掛けて曲げても枝のしなりに負け、戻ってしまうことがあります。
それでは意味がありません。
そのため
・どの位曲げるのか
・枝のしなり(強度)はどれくらいか
・どの枝と掛け合わせるか
等を加味して番手を選ばなければなりません。
これは実際に枝を触り、巻いてみてちゃんと効くかどうかを経験しなければ分からないので、とにかく巻いて経験しなさいという意味です。
うまく巻けるようなるにはとにかく数なんですね。
とはいえ最初はどの太さを選んでいいかわからないと思います。
太さの選び方
アルミ線と銅線で違いますが、基本的に枝に巻いて曲げた時に離しても元に戻らないというのが絶対条件です。
効かない針金は巻く意味がありません。
もし、切り落とした枝があればそれに針金を巻いて、実際に曲げてみる事が出来れば感覚がつかめると思います。
ない場合の選び方のポイントをあげます。
枝を親指で曲げた時の硬さ(しなり)と針金を同じように曲げた時の硬さが大体同じくらいの太さを選びます
こんな感じです。
とはいえ、実際に巻いてみないことにはわかりません。
このくらいかな?と思った番手を覚えておきましょう。
次に針金の巻き方を紹介します。
針金の掛け方
基本的に針金は2本の枝を掛けあわせて巻いていきます。
掛け合わせる枝は太さが近いもの同士が基本です
巻く際の角度は45度が基本
これは、途中に小枝があったりするとずれるので、あくまでも基本ですが、45度が一番力が伝わりやすく曲げた際の枝の負担も少ないです。
特に初心者の方は角度が浅くなりがちです。注意しましょう。
巻く際は隙間ができないように巻く
針金巻きの基本であり最重要の項目です。
隙間ができるとうまく力が伝わらず、変なところに力が掛かってしまったり、うまく曲げられなかったりします。
つまり、いかに適切な番手で枝に対して効く針金をかけられるかが重要になりますが、これが難しい技術なのです。
【実践】実際に針金を巻いてみる
今回はこの切った五葉松の枝を使っていきます。

使用するのは銅線の16番線です。
針金掛けの前に邪魔になる古葉を取っておきます。
除去後
針金を用意します。
長さは大体かける枝の全長1.5倍ほどが目安ですが、最初は長めに切りましょう!足りないと面倒なので・・・。
まず片側から巻いていきます。一巻きか二巻きした所で止めます。
反対側を巻いていきます。
ポイントです。【画像は裏から見たものです】
松柏の針金をかける際は、最後芽起こしという作業を行うので、芽の元あたりまで針金をもってきます。
裏から見た全体図です。
途中で止めていた針金を最後まで巻きます。
残りの枝も巻いていきます。
先ほど巻いた針金に沿わせるようにして巻いて下さい。
黄色い線の枝同士で掛けあわせています。
裏面
最後に芽起こしをします。葉の元を起こして下さい
今回は単純な枝に針金を掛けましたが、実際は千差万別です。
基本をしっかりと抑え、盆栽に優しく、しっかりと効く針金をかけましょう。
また、一度巻いた針金(銅線)はすでにクセがついてしまっているので、もったいないですが再利用しないようにしましょう。
盆栽が成長すると巻いてある針金が効かなくなったり、枝に食い込んでしまいます。
そうなった場合は、針金きりを使って巻いてある針金を除去し、新規で針金を巻きましょう。